
最初は、本当に運命みたいな出会いだった。
たまたま知り合った人に食事へ誘われ、そこで初めて「今のままで終わりたくない」と思っている人たちに出会った。
年齢も近く、エネルギーもある。
会社員だけではない生き方を本気で目指していて、夢やビジョンを当たり前のように語っていた。
当時の自分には、それが眩しく見えた。
「こんな世界があるんだ」
「もっと早く知りたかった」
そう思った。
そこから紹介が続き、勉強会に参加し、さらに人を紹介される。
気づけば毎週のように予定が入り、毎日誰かと会っていた。
でも不思議と疲れなかった。
むしろ、人生が動き始めている感覚があった。
「これは運命だ」
本気でそう思っていた。

そこから「師匠」と呼ばれる存在に出会った。
話し方、考え方、行動力。
今までの自分の周りにはいなかったタイプの人だった。
「この人についていけば人生が変わる」
そう感じた。
それまでの自分は、どこか人生に諦めを持っていた。
会社と家を往復して、たまに遊んで、気づけば年齢だけ重ねていく。
そんな未来しか想像できなかった。
でも、その環境では違った。
「自分次第で人生は変えられる」
「本気でやれば誰でも可能性がある」
そんな言葉を毎日のように聞き、少しずつ自分も前向きになっていった。
入会した日のことは今でも覚えている。
「これで人生が変わる」
高揚感しかなかった。
活動も楽しかった。
仲間と夜遅くまで語り合い、成功者の話を聞き、将来の夢を語る。
イベントに行けば熱気があり、みんなが同じ方向を向いているように見えた。
毎日起きることすべてがポジティブに感じられた。
嫌なことが起きても、
「これは成長のため」
「意味がある出来事」
そう解釈していた。
むしろ、うまくいかない現実すら“挑戦している証拠”に思えた。

でも、少しずつ現実とのズレが出始めた。
結果が出ない。
思っていたように収入は増えず、焦りだけが大きくなっていった。
それでも周りは前向きな言葉を口にする。
「継続が大事」
「諦めたら終わり」
「まだ本気じゃないだけ」
だから自分も止まれなかった。
気づけば、お金も無理をするようになっていた。
最初は「自己投資」のつもりだった。
でもいつの間にか、自分のキャパを超えた使い方になっていた。
借金もした。
もちろん、誰かに強制されたわけではない。
でも当時の自分は、「ここで止まったら負けだ」と思い込んでいた。
正常な判断ができなくなっていたんだと思う。
この時期は生活を維持するためにルームシェアをする人もいる。
最初は「成長のための経験」と前向きに捉えている人ばかりだ。
でも心のどこかでは、苦しくなっていた。

そして何より、自分で考えなくなっていた。
「これはどう思いますか?」
「どうしたらいいですか?」
気づけば、全部を誰かに委ねていた。
本来なら、自分の人生なのに。
うまくいかない原因を、自分で分析することもしなくなった。
ただ「教わった通りにやれば成功する」と信じ込んでいた。
だから結果が出ないほど、さらに思考停止になっていった。

そんな時、昔からの友人に言われた。
「最近、なんか変わったよな」
「それ、本当に大丈夫なの?」
最初は反発した。
「何も知らないくせに」
「挑戦してない人には分からない」
そう思った。
でも、その言葉がずっと頭に残っていた。
なぜなら、自分でも薄々気づいていたからだ。
無理をしていること。
苦しくなっていること。
でも認めたくなかった。
認めた瞬間、今まで信じてきたものが崩れる気がしたから。

そして最終的に、退会した。
離れた直後は、とにかく環境のせいにしたかった。
「あの場所が悪かった」
「あの人たちに人生を狂わされた」
そう考えた方が楽だった。
前半は全部「運命」として受け入れていたのに、後半だけ全部「被害者」になる。
今思えば、かなり都合のいい考え方だったと思う。
もちろん、環境に問題がなかったとは言わない。
熱量の高い空気の中で、冷静な判断ができなくなることはある。
言葉を信じすぎてしまうこともある。
でも、最終的に選択していたのは全部自分だった。
入会を決めたのも自分。
借金をしたのも自分。
無理を続けたのも自分。
周りの声を聞かなかったのも自分。
そして、自分で考えることをやめたのも、自分だった。
退会してしばらく経ってから、ようやく冷静に振り返れるようになった。
あの時の自分は、「理想の未来」ばかりを見て、現実をちゃんと見ていなかった。
都合のいい言葉だけを信じ、苦しいサインから目を逸らしていた。
でも逆に言えば、あの経験があったからこそ、今は分かることもある。
人は、環境だけで人生が変わるわけじゃない。
結局最後は、自分で考えて、自分で選び、自分で責任を持つしかない。
あの時に引き寄せた現実は、誰かに与えられたものではなく、
自分自身の選択の積み重ねだったのだと思う。



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