
事業家集団を退会した当時、私は一つの確信を持っていました。
「これからは、お金が貯まる。」
活動中は、書籍やセミナー、交通費、交際費など、自己投資に多くの支出をしていました。その支出がなくなるのだから、当然、家計には余裕が生まれ、貯蓄も順調に増えていくはずだと考えていたのです。
実際、このように考える人は少なくありません。
「辞めれば毎月の自己投資がなくなる。」
「その分を新NISAやインデックスファンドへ回せば資産形成は加速する。」
「もっと早く辞めていれば良かった。」
私自身も、当時はそのように考えていました。
しかし、現実は想像していたものとは大きく異なりました。
支出は減った。それでもお金は増えなかった
退会後、確かに毎月の固定的な自己投資は減りました。
セミナーへの参加費用もなくなり、交通費も減り、以前のように毎月何冊も本を購入することもなくなりました。
数字だけを見ると、毎月数万円単位の出費がなくなったはずでした。
ところが、通帳の残高は思ったほど増えませんでした。
理由は非常に単純でした。
自己投資に使っていたお金が、別の支出へと置き換わっていただけだったのです。
旅行、外食、趣味、洋服、家電、ネットショッピング。
「今まで我慢していたから。」
「退会した自分へのご褒美だから。」
そんな理由をつけて、私は以前とは違う形でお金を使っていました。
つまり、支出の内容が変わっただけで、「お金を使う習慣」そのものは何も変わっていなかったのです。
お金は「使わなければ貯まる」わけではない
ここで初めて気づきました。
お金とは、使い道がなくなれば自然に貯まるものではありません。
多くの場合、人は空いた支出を別の支出で埋めてしまいます。
これは心理学でいう「生活水準の適応」にも近い現象です。
収入が増えれば生活水準が上がる。
支出が減れば、新しい支出が生まれる。
つまり、お金が貯まるかどうかは、支出の種類ではなく、お金との向き合い方によって決まるのです。
自己投資をやめれば豊かになるわけでもない
近年、「自己投資に使うくらいなら、そのお金をインデックス投資へ回した方がいい」という意見を目にすることがあります。
数字だけで考えれば、その意見には合理性があります。
毎月一定額を長期で積み立てれば、大きな資産になる可能性は十分あります。
私自身も長期投資を否定するつもりはありません。
しかし、その議論には一つ抜け落ちている視点があります。
それは、「本当に継続できるのか」という問題です。
『金持ち父さん 貧乏父さん』は株を買えと言っている本ではない
私は事業家集団にいた頃、『金持ち父さん 貧乏父さん』を読みました。
この本は非常によく誤解されています。
「株を勧める本。」
「ネットワークビジネスの人が勧める本。」
そのような印象を持つ人もいます。
しかし、本書を最後まで読めば、そのような内容ではないことが分かります。
著者のロバート・キヨサキが伝えているのは、
「一生お金のために働き続けるのではなく、お金を生み出す資産を作り、お金に働いてもらう考え方を身につけること」
です。
さらに重要なのは、この本には、
「ネットワークビジネスを始めなさい」
とも、
「人を勧誘しなさい」
とも書かれていないことです。
また、「いきなり株を買いなさい」とも書かれていません。
むしろ本書では、お金の知識を学ぶこと、恐怖や欲望に振り回されない考え方を身につけること、継続して学び続けることの重要性が繰り返し語られています。
つまり、この本が教えているのは投資商品ではなく、「投資家としての考え方」なのです。
継続できる人は何が違うのか
私は事業家集団環境で学んだことをすべて肯定するつもりはありません。
反省している点もあります。
冷静さを失っていた場面もありました。
しかし、一つだけ事実として言えることがあります。
それは、学びを継続できる環境があったことです。
読書をする。
目標を書く。
人と話す。
行動する。
その習慣を維持しやすい環境が存在していました。
退会後、その環境はなくなります。
すると、自分一人で継続することの難しさを痛感しました。
投資も同じです。
口座を開設することは簡単です。
積立設定も数十分で終わります。
しかし、本当に難しいのは、その後の10年、20年を継続することです。
暴落が起きても続けられるか。
生活が変わっても続けられるか。
誘惑に負けず積み立てられるか。
そのためには、金融知識だけではなく、人間としての継続力や習慣、そして支えてくれる環境が必要になります。
私が今考える資産形成
現在の私は、資産形成において最も重要なのは順番だと考えています。
まず、自分自身の価値を高める。
学び、働き、価値を提供し、稼ぐ力を身につける。
そのうえで余剰資金を資産へ投資し、お金にも働いてもらう。
この順番が自然ではないでしょうか。
だから私は、『金持ち父さん 貧乏父さん』を、株式投資の本でも、ネットワークビジネスの本でもないと考えています。
あの本は、お金に対する価値観を変え、自分の人生を主体的に設計するための本です。
そして、事業家集団を辞めたからといって、自動的にお金が貯まるわけでもありません。
お金を残せるかどうかは、所属する環境ではなく、自分自身がお金とどのように向き合い、どのような目的を持って使うのかによって決まるのだと、私は退会後の経験を通じて強く実感しています。



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